ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア:たったひとつの冴えたやりかた

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版

 本が好き!様から献本頂きました。主人公となる16歳の少女、コーティ・キャスが誕生日にプレゼントされた宇宙船!宇宙マニアのコーティは溢れる好奇心と冒険心を押さえられずに両親に内緒で大宇宙へと飛び出してしまう。旅の途中で出会ったエイリアン、シロベーン。たった一人で飛び出したコーティにとっても、ひとり彷徨っていたシロベーンにとってもお互いは大事な友人となる。

 そんな大冒険活劇SF!で、冒険の末に陥ったピンチを「たったひとつの冴えたやりかた」で解決して大手柄…!と思いきや。いやある意味その先入観は全く間違っては居なかったのだけど、描いていた結末とは大きく違うものでした。コーティとシロベーンの出会いがもたらした深く強い友情が、結末に向けて二人を苦しめる鎖となっていく…そんな描写が本当に苦しい。

 翻訳を手掛けた朝倉久志氏の分かりやすくて優しい文体が、彼らの友情を本当に純粋にしてくれているなぁという印象。快活で好奇心に溢れるコーティの表情だとか、未熟だが真面目なシロベーンの感情の動き…。二人が出会ってからの物語は、結末まで本当にあっという間だった。(前半のSF用語が並ぶ場面は個人的にはやや読みにくい。意味は分かるんだけど、これ覚えてないともしかして楽しめないのかなぁ…と若干不安になるあたりが。実際はそれらは後半ほとんど必須でない要素になる)

 そんなわけでかなり有名な本作だとは思いますが、まだ未読の方がいましたら是非是非。今回頂いたのは、1987年に早川書房から出版された同名の文庫本「たったひとつの冴えたやりかた」から表題作のみ改訳して再出版されたもの。改訳版は確かに旧訳版と比べて2篇足りないし価格も高いので、コストパフォーマンス的には旧訳版の方がオススメ。でも現代的に改訳された読みやすさで言えば恐らくこちらがオススメ。(旧訳版を読んでいないので正確ではありませんが…失礼)個人的には装丁の綺麗さも気に入っています。



 SFの入り口としては最適な1冊かも。この後は「夏への扉」で決まりですね。

たったひとつの冴えたやりかた 改訳版

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書評/SF&ファンタジー