重力が衰えるとき

重力が衰えるとき (ハヤカワ文庫SF)

重力が衰えるとき (ハヤカワ文庫SF)

 SFを読みたいブーム。「ニューロマンサー」→「月は無慈悲な夜の女王」→「流れるよ我が涙、と警官は言った」と来てこれ。ニューロマンサー読んでる時に、同じような系統の、ブレードランナー的な…ということで発見した。ちょうど復刊したタイミングだったのでとりあえず買った。買ってから積まれていたけどブームの流れでついに発掘して遂に読了。最近Kindleでばっかり本を読んでいたが、たまには紙の本も良い。Kindle paperwhiteを手に入れてから、無理矢理これを使おうと本を読んでいた結果、活字を読むならできればpaperwhiteで読みたいと思えるまでになった。軽いし薄いし持ち運び簡単だし。おすすめ。紙の本の良いのは、左手の感触で残りのお話の分量がわかることね。そりゃKindleでもパーセンテージの表示があるからわからなくはないけど、感触でわかるってことが重要。あとさくっと先の展開をチラ見できることね。先の展開をチラ見しながらでも興奮度を損なうことなくお話が読める性格なので、「これこの先どうなるんだろ」ってモヤッとした時にパパッと先の展開をチラ見できることはちょっとうれしい事なのだ。Kindleは延々とめくるか、ページを送るスライダーを呼び出して先送るか…とにかく手間がかかるのが面倒。なのでKindleで読む本はおとなしく順番にチラ見せずに読まざるを得ない。

 ニューロマンサーを読んだ時には大変に読みにくい日本語だなぁとお話を追うのがメチャクチャ大変だったのだけど、この本はものすごく読みやすくて話がよく分かる。話がよく分かるのは、お話が面白いという事に非常に重要。何やってるからよくわからん物語なんて面白いわけがない。ニューロマンサーはそういう意味では面白いとは言えなかった…。世界観が面白いのと、状況描写がカッコイイというものすごくピンポイントな読み方。ときどきニンジャスレイヤーめいた所も。とにかく以降の作品に影響を与えたのであろうなぁという「どこかでみたな」という設定があふれてるのが良かった。つまりニューロマンサーから始まったであろう様々な仕組み。

 サイバーパンクといえば文明とか科学とか、そのあたりの発展からすなわちアメリカやヨーロッパの未来的なイメージなのだけど、この作品はどうやら中東のようだ。イスラムの教えが人々に根付いている。会話のあらゆるところに儀式的なやりとりが織り込まれてて独特の雰囲気。これが面白い。クスリ漬け設定。電脳化。人格モジュール。今でこそ見慣れたSF設定だが、1987年当時にはどのように世の中に受け止められたのだろう。そういう発見、発明の衝撃はその時代の人々でなければ味わえない。