ヴァーチャル日本語 役割語の謎

 漫画とかアニメとかで特徴的な語尾つけて話すキャラクター登場するけど、そんな喋り方する人いねぇよなって話は、最近わりと視聴者みんなが考えているのではと思う。わかりやすいところで言うと「ザマス」だけど、女性キャラクターの「〜だわ」「〜かしら」みたいなやつも。「ザマス」はスネ夫ママくらいの専用語尾となってる感もあるので異質さがはっきりわかるけど、「〜だわ」「〜かしら」系はまだ生き残ってるような気がする。特に子供向け作品では多い気がする。多い気がすると言ったものの、子供向け作品あんまりみてないので本当はそうでないのかもしれない。YouTubeあたりで探してみよう。


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 ざっくり観てみたけど、変な語尾使うのはマスコットキャラくらいかな…。人間キャラは現実的な言葉遣いな気がする。セリフそのものが現実的かというのはさておき。


かわるって むずかしい(しまじろうのわお!アニメ)

 みみりんのお母さんが女性的な役割語を話していた。

そんなことないわよ。お店の手伝いをしてくれるし。ママは頼りにしているわ。

この類の語尾は現実で話す人はほぼいないのではと思う。ちなみにみみりんがこういう言葉遣いをあまりしないのは結構重要なポイントな気がする。この動画しかみてないので、データは足りないけど。

 本書によれば「標準語」というのは、読者が感情移入するための重要なポイントだ。子供向けのアニメ作品のなかで、みみりんが「〜だわ」みたいなみみりんママ的語尾でないのは、視聴層である子供がそういう話し方してないってことでもあるし、そのような話し方が異質なものであることの証明だと思う。

 ちなみに本書に「博士」や「老人」キャラによるありがちな「〜じゃ」という語尾が紹介されているのだが、これは元々上方の方の言葉だったのだという。それが江戸で話される言葉の変化、形成と共に、「老人」が話す言葉として定着したということだ(ざっくり省略した説明)。

 話し言葉の変化!これは現代にまで続く変化だ。「てよだわ言葉」というのが紹介されているのだが、これが明治の初めの頃は美しくない言葉遣いとして知識層が批判していたらしい。女学生の間で流行った言葉遣いだそうで「女学生ことば」とも名付けられている。それがそのまま女性の間に定着し、女学生以外にも使われるようになり、一般化し、なんなら今では丁寧な言葉遣いとして認識されているような気もする。いわゆるお嬢様言葉というやつ。

 思いつくまま書いてるので言いたい事が遠回りになったが、みみりんママの言葉遣いも、この「老人キャラ」の言葉遣いと同じ流れになるのではないだろうか。役割語ステレオタイプを利用したテクニックで、人間性を掘り下げる必要のない脇キャラの設定を端的に表すことができる。これらのキャラクターには視聴者が感情移入する事を想定してない。そして時の流れと共に使われなくなった言葉ということだ。「こんな言葉遣いしねえよ」と思ったら、そのキャラクターについてはあんまり深堀りする必要が無いよというサインであるということだ。

 子供向け作品の言葉遣いというのは、そのまま子供の言葉遣いに影響すると思うのだけど、動画貼り付けた2作品では言葉遣いの男女差を殆ど感じない(メインキャラについては)。現代的な演出だなぁと思うし、そして自然に観られるのでこの変化は正解だと思う。今後は役割語は無くなってしまう可能性もある気がする。役割を規定することが差別的な意識と結びついてしまうこともあるからだ。そのような差別的意識を、現代では可能な限り排除しようとしている。