いつも相手以上の気概で物事には臨む、という心構え。

 朝の11時から始まって21時までほぼ休みなしに作業をし続ける。現場には入れ替わり立ち替わり新しい人がやってきては、我々はその仕事をチェックして修正して完成させる。1時間毎に10分程度の休憩を取るモノの、終盤近くではその程度の休憩では払拭できない疲労の色が現場に強く漂う。無理も無い。実際問題としてこれだけ作業を続けると肉体的に疲労してくるのは勿論、持ち込まれるモノはその人なりの色が違えど形式としては同じものである。飽きる。やがてチェックすべきポイントがそれまでのパターンによって絞られ始める。ルーチンワークだ。細部のニュアンスと全体としてのバランスをチェックすること、新しいアイディアを付け加えること、と言ったチャレンジは徐々に無くなっていく。作業は効率化されてスピードアップしてエネルギー消費の少ない流れ作業になる。

 だが入れ替わりやってくる人々はそんな疲労した我々とは関係無く、そこに全力をぶつけるべく入念な準備を行い、気力を充実させ、仕掛けるポイントを狙い、思考を集中させ、そしてそんな全力の自分自身に審判を与えられる事に緊張してその場に臨む。そんな彼らに対しては、どんなに疲労していようと最低でも彼らと同じくらいの気概を持って臨む、というのが最低限の礼儀だと思う。自分はむしろ彼ら以上の気持ちを持っていたい。結局の所それが最終的には良い結果を生むことになるはずだ。どちらが手を抜いても後悔する結果にしかならない。それにこれは信頼関係の問題にも繋がる。彼らがその短時間の中で接した印象というものが、例え我々が瞬間的にどのような状態であったとしても、その切り取られた一部は全体であるかのように、個々の印象に焼き付く。一瞬の気の緩みが、その後の信頼関係に大きく影響するという事にもなりかねない。入れ替わりやってくる人は初対面の人間であることも多い。疲労感まるだしのルーチンワークは第一印象最悪だ…!

 自分の仕事上のポリシーは「相手以上の気概を持つ事」。その有用性は結果と環境に現れていくと信じている。