ゆれる

ゆれる [DVD]

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 すばらしい。暗い雰囲気が満ち、閉塞感がびしばし伝わってくる。暗い邦画って大好きさ!役者の芝居もタマランね。オダギリジョーのスカした感じ、香川照之の行き詰まっちゃってる感じとか。伊武雅刀の何言ってるからさっぱりな方言も雰囲気あってよし。蟹江敬三さんの弁護士もいいね…すげぇ信頼感あるよ。木村祐一は個人的にすげぇ嫌いな人間だから、劇中ではヘドの出るような嫌味な検察官が非常に効果的に伝わってます。ええ、個人的に。
 ラスト30分の展開は個人的に兄弟がある身としては共感出来ない、というのが正直な所。直前の喧嘩を伏線に、裁判への流れは仕掛け的には面白いが、ちょっとリアリティに欠けるかも。もっと複雑な伏線、智恵子の事とか、気持ちの流れがあのかもしれない…が、あのようなラストシーンが用意されたている事とのつじつまが合わないような気もする。
 とはいえ、全体を通しての沈んだ雰囲気、演出やお芝居などなど、ドラマへの没入感を得られる良作だと思いました。なのでラスト30分云々は後付け。見ているときはむしろ気持ちの良い裏切り…いや、気持ち悪い裏切りか。いい意味で。同じ西川美和監督で「蛇イチゴ」も観たい。

以下、結末までのあらすじメモ

東京で写真家として成功した早川猛(オダギリ ジョー)は、母の一周忌で久しぶりに帰郷する。母の葬儀にも立ち会わず、父・勇(伊武雅刀)とも折り合いの悪い猛だが、温厚な兄の稔(香川照之)はそんな弟を気遣う。稔は父とガソリンスタンドを経営しており、兄弟の幼なじみの智恵子(真木よう子)もそこで働いていた。智恵子と再会した猛は、その晩、彼女と関係を持つ。翌日、兄弟と智恵子は近くにある渓谷へ向かい、稔のいないところで智恵子は、猛と一緒に東京へ行くと言い出す。智恵子の思いを受け止めかね、はぐらかそうとする猛だが、猛を追いかけて智恵子は吊り橋を渡る。河原の草花にカメラを向けていた猛が顔を上げると、吊り橋の上で稔と智恵子が揉み合っていた。そして智恵子は渓流へ落下する。捜査の末に事故死と決着がついたが、ある日、理不尽な客に逆上した稔は暴力をはたらき、連行された警察署で自分が智恵子を突き落としたと告白する。猛は東京で弁護士をしている伯父・修に弁護を依頼するが、公判を重ねるにつれ、稔はこれまでとは違う一面を見せていく。稔は、智恵子の死に罪悪感を抱いていたために「自分が殺した」と口走ってしまったと主張。その態度は裁判官の心証をよくし、公判は稔にとって有利に進む。しかし、稔が朴訥に語る事件のあらましは猛の記憶とは微妙に違っていた。猛は面会室で稔に、高所恐怖症にもかかわらず、どうして吊り橋を渡ったのかと兄に問う。稔は「お前は自分が人殺しの弟になるのが嫌なだけだよ」と答える。後日、証人として証言台に立った猛は、稔が智恵子を突き落としたと証言する。7年後、スタンドの従業員・洋平が猛の元を訪れ、明日、稔が出所することを伝える。その晩、昔、父が撮影した8ミリ映写機とテープを見つけた稔は、テープに残された幼い頃の兄と自分を観る。猛の目に涙があふれる。明け方、猛は車を走らせ兄を迎えに行き、歩道を歩く稔の姿を見つけ「家に帰ろう」と叫ぶ。稔は猛の姿を認め、微笑む。

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD9134/story.html

微笑んだ稔がどうなったか分からない所はお決まりの仕掛けですね。あれ、なんで笑ったんだろ。個人的には冷たい気持ちだったのではないかと考える。「俺をハメておいて今更何をしにきた?」うーん、でもどうなんだろ。あの後仲良く家に帰ったのかな。それはそれで何か気持ちが悪いなぁ…。