- 作者: ソポクレス,藤沢令夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1967/09/16
- メディア: 文庫
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図書館に野村萬斎のオイディプス王が入っていたので早速視聴。演出:蜷川幸雄!ギリシア悲劇に野村萬斎という狂言の要素を取り入れたこのキャスティングは絶妙。かなり狂言寄りの演技だったと思うのだけど、それが新鮮。オイディプス王に合う!
演技的に特に印象に残ったのは、オイディプス王の叫び。残酷な事実を知ったときに思わず漏らす心の叫び。声は出ない。祈るように眼を閉じ、口は開けども声は出ない。だが悲しみは漏れている。悲痛な想いが深々と突き刺さる好演技だったと思う。
また相変わらず舞台上にとどまらない、客席も巻き込む蜷川演出は印象的。衣装も良い。真っ赤な衣装を纏った「嘆願者」。対照的に真っ白な衣装の王、そしてイオカステ。神聖なる王であった存在が、最後には苦しみの嘆願者同様赤く染まる。
背景を鏡にしたのは何故だったのだろうか。確かに鏡にすることで同じ空間の連続体を作るので、閉塞感を演出していたようにも思う。だがあれは舞台上の役者や空間を映すことよりも、むしろ客席の人間を映し出すことを目的にしているのでは無いかと思った。演劇を観ているはずが、自分たちをも観ている、そんな映像が印象的だったから。真の意図は不明だけど。