青春映画:マリー・アントワネット

 マリー・アントワネットを観てきました。色彩感豊かな映像に飾られた、華やかな映画。煌びやかなファッションや極彩色のお菓子に囲まれて、また時折悪戯っぽくニヤリと笑うマリー・アントワネットの、子供のような無邪気がとても出ていた映画だった。伝えたいテーマがある、と言う作品では無くて、描きたい世界がある、という意図が画面から伝わってくる。

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(以下ネタバレと偉そうな感想アリ)


 ただそのためなのか、映像的な煌びやかさはあるけれども、場面場面の繋がりがちょっと乱暴だったかなぁ。感情移入を阻むような時間軸の切替が多かった。それゆえ全体的に感情的な起伏が少なくなりがちで、そこが残念。フランスの伝統的なしきたり縛りを壊していく彼女の快活さや、ファッションやお菓子に明け暮れる毎日、自分と関係を持ってくれない夫や、世継ぎが生まれない事によるプレッシャー、それぞれ描写は魅力的。

 この作品で感心したのは音楽。冒頭からロックに合わせて黒地にピンクでクレジットが表示されたのには正直驚いた。「マリー・アントワネットってフランス中世モノじゃないのか?」安易に考えるならモーツァルト等の古典クラシック。でもそうじゃない、この映画はマリー・アントワネットの青春映画だからこれで良かった。つまりこの作品は伝記映画じゃなくて、派手に楽しく過ごしたい青春時代を描いた作品で、言ってしまえばマリー・アントワネットじゃなくても良いわけ。ロックバンドに目覚めた女子高生とか*1。だから音楽は現代的なポピュラーミュージックでOK。逆に彼女が退屈を感じる場面でクラシック。上手い。

 マリー・アントワネットを描くときに問題になるのが、彼女の一生のどの場面をメインとするかだと思う。14歳までオーストリアで過ごし、フランスへ行って結婚して華やかな生活を送るが、民衆から憎まれてフランス革命後に斬首刑。「派手で楽しい青春時代」をメインに据えた本作だけれども、ラスト15分?くらいは財政難と国民からの批判がちらつき始めて、革命が起こり、逃亡するところで終幕。全体的な流れからして落としどころが個人的に微妙。栄枯盛衰を描くのには短い気がする。感情的に中途半端になってしまわないか。

 青春映画として作るなら、もっと唐突に不幸が襲って終結しても良かったかな。子供が汚い大人の現実を知る衝撃のように。

*1:ロックに啓示を受けた女子高生が仲間(しかし音楽音痴)を集め、バンドを結成してヘタだけどガムシャラに!上達!毎日が充実!でも仲間と喧嘩、和解、友情みたいな。