ビフォア・サンライズ

 ラブストーリーのようでそうでない、でもラブストーリー。そんな映画。

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 [DVD]

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 [DVD]

 ほぼ全編に渡ってジェシーセリーヌのダイアローグで構成される。それが不思議と心地良い。殆どBGMが流れることなく、あくまで淡々と会話を続ける二人のシーンが続いていくのだが、その内容の興味深さはもちろん、ウィーンの美しい町並みを背景にしていることも一因になっている。町並みの点描なんかには美しい音楽がつけられているけど、魅力あるダイアローグには音楽で補強するところなんてどこにもない。

 続編となっているビフォア・サンセットも期待。

以下結末までのあらすじ

 長距離列車の中、夫婦喧嘩をする二人のシーンから始まる。静かな車内に響き渡る喧嘩の声。無視しようとしても、壁で仕切られているわけでもない狭い車内でそれは難しい。隣に座っていたセリーヌはたまらず席を移動する。すると隣に座っていたのがジェシー(後ほどセリーヌジェシーを見つけてそこに座ったと告白する)。二人はその後意気投合して、ウィーンで下車し、朝まで歩き回る事になる。

 セリーヌを引っ張り出す時の理論がなかなか面白い。10年後か20年後か、君は結婚して夫がいるが、愛情が薄れて結婚を後悔している。今まで出会った男達を思い出して、あの男なら上手くいっただろうかと思い返す。そしてタイムマシンで戻ってきた。今!
 そんな無茶な…でもその理論でくっついていくセリーヌはなかなか魅力的な女性だと思う。

 勿論二人はあっという間に恋仲になって、だが別れは翌日の朝だ。これで終わりにしようと誓った二人だったが、電車の出発直前にまた6ヶ月後に合おうと約束して別れる事になる。

 いわゆる電車で別れるシーンにありがちな、車内の一方と、ホームで追いかける一方、という作りを捨て、振り返ることなく電車に乗り込み座席へ向かうセリーヌ、同じくホームにとどまる事無くとっとと移動してしまうジェシーという、お互い淡々とした描写にむしろ繋がりの深さを感じた。