ラストでアルは救われたが

 戦争で精神を病み、憧れていた鳥になってしまったバーディ。アルの悲痛な祈り、厚い友情のお陰でラストには正気を取り戻したかに見えた。最後の台詞に、今までの暗い雰囲気を無かったことにする救いの力が込めてあることは分かる。だが本当にバーディは正気を取り戻したんだろうか?あのシーンはアルの世界ではなかったのか。

 物語が進むにつれて、僅かな人間らしさを取り戻していくバーディとは対照的に、病んでいくアル。あるところからアルまでも精神を病み、都合の良い妄想をしていたに過ぎなかったら…?正気を取り戻したかのようなバーディだが、変化は劇的だったし、しかもアル以外の人間の前では元通りだ。どうしてもこの疑問を捨てきれない、少し後味の悪い映画だった。

 病室の陰鬱な描写、純粋な憧れを持つバーディ、アルの友情、地味ではあるけども何度観ても飽きない気がする。