ゴダールってなんなんだ

女と男のいる舗道 [DVD]

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 今までみたゴダール作品のなかではとにかくわかりやすい作品だった。映画女優を目指して色んなものを捨てていく女性。だがその意志とは逆に娼婦として墜ちていく。娼婦が墜ちた職業だとは思わないけどね…彼女の意識の中にはそういうものがあった。

 とにかく分かりにくいゴダール。時々わかりにくいんじゃなくて、何も語っていないのでは無いかと感じることもある。平凡な事実だけが淡々と描かれ、抽象的な会話が続く。故に観る人間がそこに自由な意味づけをする余地がある。そのことによって作者の意図とは別の解釈が生まれ、作品が高められている。そんな気がしてならない。…というか、そういう余地があるということは、それだけで凄い映画なのか。議論や想像の余地の無い作品は分かりやすいけど、もしかしたら映画としては劣るのかもしれない。いや映画に何を求めるかが問題だな。分かりやすいってことはエンターテインメントとして優れているし、議論や想像の余地があるってことは芸術として優れている。

 この作品はまた見直したいという気になった。今2回目観ています。とにかくゴダールにしてはとっかかり易いのが良いし、テーマもなんとなく分かる。加えて映像的、音楽的な魅力もあって絵画を見るような気分だ。淡々とした事実描写だけでなく、心情描写も上手い。アップのカットを長めに入れて、言葉は無くとも想いが伝わるようだ。

 やっぱゴダールって芸術だわ。書きながら気づいた。