- 作者: 平鳥コウ,shimano
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/12/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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タイトルの通り、現実世界で死亡、転生して、チート能力の無いハルは娼婦として体を売って異世界で生きることになる。いわゆる異世界転生ものは転生によって謎の存在からチート性能を与えられて活躍するか、現代の様々な知識を生かして主に科学的に発達の遅れている異世界において活躍をする、というのがお約束。しかし類似のお約束作品が多いばかりに、なろう系と揶揄されるようになっているのが現状。
togetter.com
「ナーロッパ」なる言葉が最近生まれている模様。異世界転生者にとって都合のよい文化レベル、科学レベルをそなえた世界。
小馬鹿にするようなニュアンスを含んでしまっている「なろう系」だが、初期の頃はみんな素直に楽しんでいたと思うんだよね。おそらく投稿されている作品もきちんとした質のものが多かったのだと思う。WEB小説ってちょっと前まではおいそれと書いて発表するような場がなかった。作品を発表する場がどこにでもある、そのハードルが下がって誰でも作品を発表できるというのは、玉石混交という状況を招く原因になっていることは間違いない。twitterとかもそうだけど、発信のハードルが下がると、取るに足らない質の低い情報、もっと言うと害悪にしかならない情報ですら、世の中に現れてくることになる。それって良いことなんだろうか?
確かに誰でも情報の発信ができる自由な状況は、個々の権利を考えれば喜ばしいことなのだけど、それを受け取る人々にとっては、ある程度フィルタリングしてもらった方が本当に大事なものとか、受け取るべき質を持った情報とかが確実に受け取れるような気がする。たぶん世の中すこしずつそういう空気が出てきて、自由が許したゴチャゴチャした情報の濁流に辟易しつつある。そうするとちょっとずつ制限してもらうことに価値がでる。ピックアップとか、フィルタリングとかそういう言葉でも良い。んで、整った空気を吸っていると、やっぱり闇鍋みたいな中から自分で選択する状況を求めるようになる。自由→制限→自由→制限みたいな要求の振り子があるのかもしれない。結局無いものねだりなのが人間の欲求なのである。
閑話休題。男尊女卑のストレスをベースに、溜め込んだ鬱憤を実は隠し持っていたチートスキルにより一気に打開する。それが明らかになる展開は見事で気持ちいい。物語である以上、なんらかの解決があるのだろうなと思っていたけれど、娼婦であることがそのように生きてくるとは。逆にそのチートスキルゆえに娼婦として生きる道を選んだのか。
ポリコレ的なあれこれはやりたい人に任せるんだけど、物語としてはややあっさりしすぎている印象もある。ライトノベルとしては読みやすくていいんだけど。正直彼女のスキルが明らかになって、ひとつ山を越えただけで、登場していた様々なキャラクターが意味ある形で動いていたかというと物足りなさすぎる。これは続きを想定しているのか?ただなんかエピローグ的なものでまとめにかかっているので、これでお終いなような気もする。娼婦という題材からエロ描写もそこそこあるのだけど、どエロいかというと物足りず、物語としてもちょっと薄味。できればそのどちらかにもう少し色濃い味付けがあると良かった。