吹替の台詞にやられた

過去のない男 [DVD]

過去のない男 [DVD]

 暴漢に襲われ、記憶を失ってしまう男。口数も少なく不器用な男だが、過去は失ったが徳があり、人がそこに集まる。かなり見た目の派手さは少なく地味で、ヒロインすら美人ではない。だけどそこに温かいやりとりがあって、心地よい。

 とにかくやられたのは言葉のやりとりなのだが、吹替の台詞が秀逸。特に凄いと思ったのは電気工に電気を引いて貰った主人公が「お礼がしたい」と言った電気工の返事↓。

字幕版:

「俺が死んだら情けを」

これも悪くない台詞だとは思う。しかし吹替版は

「俺がうつむきで死んでいたら、仰向けにしてくれ」

ホント、こういう仕事って感心する…。言ってしまえば、単なる日本語吹替の口パク合わせの為に台詞を変えただけ。けどそれってかなり難しい仕事。原作の雰囲気を崩さず、パクに合わせることが最低でも要求され、しかもそこに詩的な要素を加える。誰もが何気なく観ている影で、良い仕事をする人がいる。そんな人に私はなりたい。