クラッシュ:実感できない人種差別の緊張

クラッシュ [DVD]

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 アジア系や黒人への人種差別の描写をベースに、小さなきっかけから起こる連鎖的な「クラッシュ」を巡る群像劇。人種差別の緊張が画面からひしひしと感じられる。言葉には出来ないけれど、確かな怒りとして人の根底に潜んでいる。ところどころその緊張が決壊する場面は直視できない。性的な嫌がらせを受けた警官に助け出される場面、誤解から生まれた怒りから銃を撃ってしまう老人、父親をかばう娘。そんなクラッシュの結末に、緩やかなメロディーで綴るラストシーン。平和の希望が残されたようなエンディングだったが、やや強引な感じも。

 ところで様々な映画で描写される「人種差別」を実感できない。人種差別が深くない日本で育ったせいか。彼らが人種という要素でお互いを順列付けることに、本当なのか?とどこか眉唾ものだ。平和なことなんだろうけど。平和ボケなだけかな。アメリカ社会には未だに黒人が奴隷だった記憶が深いのだろうと思う。そういえばレイ・チャールズの時代にも黒人差別があったなぁ(「Ray」で観た)。そう考えるとこの映画での描写は「映画」ではなくて「現実」なのかなと今更に思う。