じじいの話を聞くのは好きだ

闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)

闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)

残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)

残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)



 ちょっと前に「仁義なき戦い」を観て、任侠モノの気持ちよさを知った。見た目の怖さや悪徳行為はあくまでオモテで、それを支えるのは人情だ。馴れ合いこそ無いが根っこで通じ合う、そんな言葉では多くを語らない背中に浪漫がにじむ。

 1,2巻と手に入れて一気に読めた。特に1巻は良い。「槍の小輔」のおこんや「白縫華魁」「衣紋坂から」の姉を巡る話は秀逸。しかし2巻は松蔵の語りの導入に、「おおい、松蔵親分の闇がたりが始まるぞォ!」などと看守が言ってしまうので、「闇たがり」という神秘性が薄れる感じで残念。幼稚園で先生がお話ししてくれるのとは違うのだぞ。

 2巻までではまだ松蔵が仕事をするようになっていないので、次の3巻ではそれが語られるのだろうか。気持ちの良い兄貴分の哲学をどう受け継いで仕事をするのかが見物だ。

 ところでこんな風に、先輩から昔語りを聞かされるのが好きだ。しつこく同じ話を繰り返されるのはちょっと遠慮したいが、やはりその人の歩んできた道を知るのは面白い。自らの道しるべとするため、という訳ではなく*1、現在のその人間を形作った要素を知るということに面白さを感じる。その人を理解して、もっと関係を深めることが出来るような気がする。

*1:そうなる場合もあるけれど