ピアノの森:原作既読にはツライか

 ピアノの森が大好きなんです。思えば音楽を題材にする漫画ってもはやチート行為だと思う。実際の音楽ってのは当然音が鳴るわけで、音、作られた空気の振動に良いとか悪いとか評価が付くわけである。それを漫画のやつと来たら、音が鳴りもしねぇのに、ちょっと大ゴマ使って、派手目に描くと、勝手に頭の中で音楽が再生されて、しかも超一流の演奏で全身トリハダもんなんですよ。なんなんだろうアレは。楽器とか音楽やっていない人もそうなんだろうか。昨今ののだめブームを鑑みるに、音楽やっていない人にもある程度そういう体験があるとは思われる。

 まぁそういう訳でピアノの森、大好きなんだよ。風俗で働く母を持つカイが、森で見つけたピアノを弾く…なんてどこか現実とファンタジーが入り交じった世界観も良いし、音楽に目覚めていくカイの心の変化も面白い。修平が勝手にカイをライバル視したりして面倒になる友情関係とか、ピアニストになるんだという業と戦う様も良い。そういういろんな感情が様々にぶつかって高め合って、あのカイのコンクールの劇的な演奏が生まれるのだ。本当に、あの場面は何度読んでも震えるように気持ちが高ぶる。

 それを…あんなにさっくりやられたんじゃ…。 感情移入も何もあったもんじゃありませんよ。原作既読の方にはかなり物足りない感じになるのでは無いかと思います…。

以下妄想

しかしではどうすれば良かったのか?ピアノの森を2時間の尺で劇場用に作るとしたら…?ピアノに目覚めていくカイはじっくり作りたい。しかしエンディングはコンクールにするしか無いとは思う。そこまでどう時間を使うか?あのコンクールでの演奏後はカットしても良いのではないか?つまり結果発表の場面はカット。カイの演奏が終わってスタンディングオベーションでED入りさせる。そこが感動の頂点だから。気持ちよく締めたい。それから誉子エピソードもカット。個人的に好きなサブストーリーだけど、あの残り時間でやるのはカイの物語というメインの流れを妨げる。その後の全国大会や、成長してからのストーリーが無いので必要なし。あとは音響面だけど、もっとウラディミール・アシュケナージが目立つように他の演奏レベルを落としてもいいんじゃないかな…。リアルを追求するより、カイのドラマを高めたい。

…やっぱ劇場じゃ尺足りないよ!せめて1クールは欲しいよ!