長江哀歌(エレジー)観てきた

 つい先日、このブログでも書いたルネッサンスを観に行った時に、上映時間までロビーでチラシを観ていると、「これは絶対観に行く」と、ちょっと映画に詳しそうな初老の紳士が手に取ったのが長江哀歌(エレジー)。それはと思って、自分も手に取ると、なるほど06年のベネチア国際映画祭で金獅子賞グランプリ、とあり、期待できそうな感じだ。まぁ…往々にして高名な映画祭で賞を獲る作品は、いわゆる「普通の人向け」ではないので、普通の人代表たる自分にとっても金獅子賞足るかは微妙なところなのだけど。

 そんなわけで今日観に行ってきた。まず始めに言っておきたいのだけど…シャンテシネがどこにあるか分かりにくいよ!グーグルマップで確認すれば分かるけど、シャンテシネ公式サイトに掲載されてるマップじゃわかんないよ!線路沿いの通りに面して建ってるのかと思ったじゃないか…。微妙に入って行かなきゃならんのに気づかないで、14時からの上映逃してしまったよ。結局17時の上映回へ行ったのだけど、満員になるギリギリに滑り込むことが出来た。さすが金獅子賞。大人気だ。おかげで最前列に座らされて、ちょっと視線移動がツライ位置でみる羽目に。

 さて肝心の内容だけど…正直最初は寝てしまった…。直前に腹ごしらえをしたものだから、その充足感と映画のゆったりとした雰囲気にやられてしまったのだ。あぁ…そういえばとなりのおじさんも寝てたなぁ。

 ストーリーは、特に派手な演出の無いゆったりまったりした流れ。三峡ダム建造を背景とした、人間模様が描かれている。正直なところ、途中までつまらないなぁ…と思いながら、遅々として変化しない状況にイライラしていたのだけど、途中から「あ、これ観るとこ違うんだ」と気づいたとたん、魅力が一気に吹き出してきた!

 というのも、「哀歌」なんて言うものだから、沈みゆく町を巡るお涙頂戴な劇的人間ドラマを想像していたのだ。でもそれは違う。これは中国の雑多な雰囲気が生み出す、映像と人間の魅力に酔う映画なんだ。哀しみはそれらのスパイスだ。ウマイ具合に効いている。解体中の建物や、いかにも中国を感じさせる霧がかった自然、暗くて不衛生そうな生活環境と、そこで汗を流して労働している人々。特に、最後の方で酒を酌み交わしながら飯を食っている場面が印象的。本当に起伏のない、なんてことない場面だけれども、いろんな感情が詰まったシーンだったと思う。ボッとライターを灯したり、カチンと杯を合わせて乾杯したり、ボリボリと何かを食べたり…そういう言葉にならない音で会話しているようで、だからこそたくさんの感情が詰まっていた。

 分かりやすいハッピーエンドは用意されていないけれど、何か力を貰ったような気分にさせられた。少しでも寝ていたことが惜しまれる!
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