アナログは宇宙を内包するか??

 現在あらゆるモノの制作現場では、デジタルの恩恵を受けている。デジタルの恩恵とは、その現場で様々だと思われるが、主には抜群の作業効率向上と、正確な結果がアナログよりも容易に得られる点にあるだろう。このデジタル化された手法に触れてしまえば、旧来のアナログ手法にはちょっとやそっとでは戻れない。だが、それでもなおアナログ手法を至上のように訴える人々が消えないのは何故なのか。

 ひとつの原因として今日考えさせられたのは、アナログ世代に生きてきた人々のデジタルに対する認識だ。「デジタルはゼロイチ」「アリかなしか」デジタルってのは1ビットなのかい…ちょっと極論過ぎやしないか。つまりデジタルはアナログっぽいモノは出来上がるが、所詮「何か」が欠落した偽物であるという認識だ。それを強く感じたのは、「アナログはな、1と0の間に宇宙があるんだよ」という言葉だ。デジタルであれば0の次は1(ああ、それは若干の誤解があるのだが…)、その間に何もない!と。まぁ言いたい意味は分かるが…。

(2/16追記)
 言いたい意味は分かる。音楽に例えれば、アナログが連続な音波であるのに対して、デジタルは所詮量子化された不連続なデータでしかない。1秒間に44100回のサンプリングを行い、一見連続な音波をシミュレートしてはいるものの、その各々のサンプリングの間には溝が存在する。だからこそ、次世代オーディオはサンプリング数を増やしてその溝の隙間を極小化することに努めているわけである。

 しかしアナログに存在するという宇宙は、果たして意味を為し得るのか?存在しているだけで、その宇宙を実利的に活用することは不可能ではないか。実際の宇宙空間においても、半径137億光年と推定される圧倒的空間の、何パーセントを人間が活用しているというのか。チリ程度にも満たない。勿論大きな意味で言えば、この巨大な宇宙空間の存在自体が意味を成して、我々の存在があるとも言える。そういう意味で言えば、アナログが発展してきた延長上に現在のデジタル技術の存在があり、そこにアナログの歴史的な重要性を認めることは出来る。

 こういった主張を展開すると、「ゆとり乙」と言われそうだが、決してアナログ技術が全てにおいてデジタルに劣っている!デジタルを使わない奴は基地の外だ!という意味ではないので、一応。つまり、デジタルだアナログだと優劣をつける行為そのものが無駄なことなのだ。結果が同じであれば、好きな手法を選べば良いじゃないか。アナログ世界に無限の宇宙旅行に出かけても良いし、デジタル世界にぴったりの選択肢を求めても良いじゃないか。それをいちいち優劣を付けたがったり、過去の思い出を美化したりするからややこしいのだ。