EX!

 知り合いに勧められてラノベ

EX! (GA文庫)

EX! (GA文庫)

 正直なところ、「悪を討ち滅ぼす!」という大義名分を武器に凶悪化する正義、という構図はよくある話。むしろ昨今、勧善懲悪という正義は絶滅に近い。しかし本作がほんの少しだけ違うのは、主人公である大和一哉が、その悪と正義の合の子であるという要素だ。悪と正義のどちらの要素も秘めた主人公、そしてその未知数の能力に興味と警戒を抱く生徒達という微妙な関係が、単純ではない人間模様を作り出していて、微妙な緊張感を作り出しているようだ。次巻以降、この関係性がどのように変化するのか楽しみ。

 欲を言えば、もう少し「熱さ」があっても良いかなとは思う。ヒーローと改造人間の戦い、といえば無闇な熱血であったり友情であったりするハズ。そういう要素が、主人公かもしくは友人にあっても良いじゃないか!とか。主人公はちょっと冷めすぎというか引いて物事を見すぎている感があるなぁ…昨今流行の主人公像なんだろーけどね。そういう意味では、悪の幹部も惚れてしまうくらいの「正々堂々の正義」、主人公の父親が非常に期待の持てる存在だ。

 というか親父を主人公に据えた話が読みたい。今はすっかり落ち着いて嫁に怯える絵本作家の父親が、ふとした瞬間に甦る情熱!身を呈して家族を守る愛ある姿!「父親」が冷遇されるこの今に、是非読みたい…!