空気人形

 空気人形を観てきた。空気人形とはいわゆる空気嫁の事(5000円で結構精巧な空気嫁が買えるんだな…?とか思った)。男は人形を人間のように扱い、彼女のように思い、そして本来の空気嫁の目的に用いる。劇中に出てくる人々は、寂しさや空虚を抱えた人々ばかりである。寂しさ、空虚が詰まった人間と、空気の詰まった人形は、カラッポだという共通点で結ばれ、この作品を通したテーマになっている。
 男が心を持った人形に対して「元に戻ってくれ」と言ったシーン・台詞が、この作品の核心部分を表しているように思う。人形が心を持って動き出すとか飼っていたペットが人間の姿になるとか、本来言葉を持たないものがそれを持って人とコミュニケーションが可能になるというのは、夢のあるプラス方向のファンタジーとして語られるところ。しかし男はそれを拒んだ。人間など感情のない人形の方が良い。その方が自分に都合が良いのだ。(口の描かれないキャラクターが愛される現象と同じ構図!)
 最近コミュニケーション不全だとか、コンプレックスや自信の無さとかそういう内的な問題をテーマにした作品ばっかりだなぁ…こういうのって果たして観た人にどう作用するんだろ。似たような問題を抱えた人々を観て「勇気づけられました」っていう思考は無いよね。

 色んな所で書かれているけれど、人形を演じるペ・ドゥナがとても綺麗でした。目が物凄く良い。