インビクタス/負けざる者たち

 金曜日に公開されたので早速観に行く。

 クリント・イーストウッドの映画が大好物だ!ド派手なアクション大作でもなく、CGを駆使した最先端の映像でもない。人間ドラマを主軸にした丁寧な面白さ。胸がスッとするような結末だけでなく、陰鬱な気分になったり、疑問が残ったりもする。そんなアメリカ人映画監督は珍しい…ような気がする。他にもいたら教えて下さい。

 で、インビクタスネルソン・マンデラの大統領就任と、ラグビーチームの再生を重ね合わつつ描く物語。「この国は誇れるものが欲しいのだ」という台詞が、南アフリカ共和国どん底状態を表している。誰でも自己の支えとなるものは欲しい*1。そしてチームは1995年、自国で開催されたワールドカップであのオールブラックスを破って優勝を遂げる。誇れるものが何も無かった人々が遂に勝ち得た「誇れるもの」。スタジアムや街のバー、ロビーで夢中になる人々のあげる歓声がとても感動的だ。他にも大統領警護の人間関係が徐々に変化していく物語や、マット・デイモン演じるフランソワ・ピナール家の人々の物語など、脇役も光る作品である。特に警護の人々は影の主役として物凄く良い味が出ている。とにもかくにも、この映画は南アフリカ共和国のサクセスストーリーだ。最後まで気持ち良く観る事が出来る。

 個人的にはモーガン・フリーマン演じるネルソン・マンデラ(劇中ではマディバと呼ばれていた)の演技がとにかく秀逸。この映画、ほぼ半分はマンデラの台詞なのだが*2、大統領として、父親として、そしてラグビーファンとして、その膨大な表情をそれぞれ魅力的に演じている。特に大統領を演じるモーガン・フリーマンの、説得力と信頼感のある口調は、動きの少ないシーンだってスクリーンに釘付けになってしまう。激しく、穏やかに、時に無邪気に自由自在だ。

 現代において政治が人々の生活を良くした事例は存在するんだろうか、なんて考えていたけれど、この作品で描かれていることは一つの答えかもしれない*3。重要なのは士気を高めることなんだ。金だとか仕事だとか、現実的な問題は当然あるにせよ、人々が理想を信じられるように士気を高めてあげる事、それが政治家が唯一すべき事なのかもしれない。


 なんか言いたい事にまとまりが付かない。

*1:それが無いのが現代人だ

*2:実際どの位話しているかは正確ではないけど、実感としてそのくらい

*3:あくまで映画なのでどこまで真実かよく分からないけど