最近太宰治が面白い

 その昔、中学生頃だったろうか太宰治の「人間失格」を読んで以来、なんだか太宰治には訳の分からない嫌悪感みたいなものを抱くようになった。もう今となっては人間失格がどんな話だったかも定かでないのだけれど、読み終わった後の何とも言えない気持ち悪さ、それから確か人間失格を読んだのは、課題の読書感想文の為だったからであろう、「これで感想書くのかよ…」という二つの嫌悪感が太宰治を最近まで遠ざけていた理由。多分。ところが何かのきっかけで、家に太宰治が数冊ある。ネットで評判が良くて、ブックオフで注文したんだろうけど…なんだったかな。

 今通勤の電車の中で読んでいるのは「女生徒」。「女生徒」の他、多数の短編が収められている。まだ読了していないのだけど、読むたびに本当に瑞々しい気持ちになる。なんだったんだろう、あの太宰治に対する黒い嫌悪感は。「女生徒」とタイトルが付けられているように、本書は女性を主人公にした短編ばかり収められている。途中女性の「貨幣」なんてオカシナ設定のものもあったが。

女生徒 (角川文庫)

女生徒 (角川文庫)

 とにかく読んでいると「太宰治が創作したんだ」ということを忘れるような、少女らしい文体、感情に満ちていて、実際に少女の気持ちにに触れるような感覚がする。単なる妄想かもしれないけど。とにかく若さが溢れていたり、繊細さが現れていたりと、「女性らしさ」のようなものが全篇からにじみ出るようだ。ここに表現されているのは、太宰治の理想の女性像と言うことなのだろうか。時々もしかしてこれは自分を重ねているのかも…と思う場面も。

 しかしこのような作品を生み出す太宰治から、なぜ人間失格のような作品が生まれたのか…非常に興味深い。この「女生徒」は著者の作品の中でも、発表された年が比較的早い(1939年)。また前年には婚約をしていて、感情的満たされている時期だったために、このような作品が生まれたのだだろうか。この変化を読むためにも、太宰治を全部読んでみたいと思った。

「女生徒」は青空文庫でも読めるので是非是非。

Wikipedia:太宰治