砂の女/安部公房

 安部公房はやっぱり引き込まれる面白さがあるねぇ。文体のリズムが非常に読みやすく、状況は細部まで描写され、そして全体を包む雰囲気はあくまで不気味。読んでいるとじゃりじゃりと口の中が砂で満たされそうなほど、砂の描写には執念めいたものを感じる。「砂の女」というタイトルも面白い。結局男にとってのこの物語は、砂と女、特に女によって支配されていることの象徴なのだろう。これだけ特殊な状況に置かれても、男としての性欲こそが行動を支配してしまうものなのか。