ナイロン100℃:シャープさんフラットさん

【脚本・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【出演】ホワイトチーム
    三宅弘城 松永玲子 村岡希美 廣川三憲
    新谷真弓 安澤千草 藤田秀世 吉増裕士
    皆戸麻衣 杉山薫 眼鏡太郎 大倉孝二
    佐藤江梨子 清水宏 六角慎司 河原雅彦

 下北沢の本田劇場で。やっと本田劇場に行けた。役者の知人曰く「本田劇場で演ったら小劇場卒業」らしい。どのような根拠があるかは不明であるが。後々分かるだろうか。とはいえ下北沢にある劇場群の最上位に位置づけられるであろう本田劇場(何を持って優劣を付けているのかはともかく)へ、遂に入場である。前日にOFFOFFシアターへ行ったついでにビレッジバンガードへ行っていたので、建物の位置は把握していたけれど、入り口が分からず数分手間取った。しかも突然の豪雨。

 突然だが、個人的アニメ作品十傑の中に、ガイナックスが2000年に制作した「フリクリ」がある。ガイナックス制作によるクセのある作風、the pillowsによる数々の美しい挿入歌、前後のつながりがあるのか無いのかよく分からないけれど、ぶっちぎりに気持ちいいストーリー…!勿論それらはこの作品の重要な要素なのだけれど、何より主役のハルハラ・ハル子の強烈な印象を残す声!芝居!によってこの作品の価値が決定的なものになった。そのハル子を演じるのが、新谷真弓さんだ。そして今回は実はナイロン100℃という劇団もそうなのだけど、その新谷真弓さんを観に行った訳である。

 実は今回はホワイトチーム、ブラックチームという二つの異なるキャスティングによって二本立てになっている。新谷さんはホワイトチームへの出演である。ちなみにブラックチームの同じ役は小池栄子さん…!ステージ上の新谷さんはそんなセクシー系では無かったが…木村はるかに似ているよね?どちらかというと理知的(個人的な好みで言えばそちらの方が)。ちょっと小池栄子Verも見てみたい気もする。とはいえたまひよのCMでエロ過ぎるキスをして苦情を叩きだしたという魅力を持ってすれば対抗することも出来るかッ…!*1って、セクシー路線で対抗する必要は皆無ですが。

 そんなわけで前置きが長くなったけれど、「シャープさんフラットさん」。喜劇作家の辻煙は過去には沢山の喜劇を生み出してきたが、今やそのセンスは時代に受け入れられなくなり、また創造力は衰えた。そんな作家を中心とした、サナトリウムのお話。主人公の「辻煙」が演劇作家であるという点が、自然とナイロン100℃の主宰、ケラリーノ・サンドロヴィッチと重なる。その事とまた、この芝居がナイロン100℃の15周年記念公演であること、様々な要素によって劇中の出来事がこれまでナイロン100℃が辿った道筋であるように思える。この劇団の過去の事は全く知らないので、その直感が正しいものかは分からないけれど、その事がこの舞台を非常に味のあるものにしてくれたように思う。

 お目当ての新谷さんは主役と最も密にドラマを展開する重要な役。曖昧な感情的に揺れる微妙な表情、表現が見れたように思う。だがそれを上回って圧倒されたのは主役辻煙を演じる三宅さんの芝居だ。テンションのスイッチが特に上手く、緩急自在に芝居の雰囲気を支配する。それでいて爆発力があって、かなり後方に座っていたのだけれど、間近で演じているような迫力をビリビリ感じる。非常に良いものを観た。

 観劇後、ロビーで15周年記念の特別パンフレットと本公演のセットになったパンフレットを購入した。2500円と結構イイ値段だ。けれどそのパンフレットは開演前から飛ぶように売れていた。開演前はその光景を、「凄いなー人気劇団はああいう所で収益を稼げて良いなー」なんてどうでも良い事を考えながら見ていたけれど、今そのパンフレットを自分も手にしている。やはり良い芝居があるからこその人気劇団なんだよな。人気取りのキャスティングだとか、下品な手法で客寄せする映像媒体が多くある中で、演劇っていうのは評価と質が適切に関係している表現方法なのかなぁと思った*2

またナイロン100℃の芝居は観に行く。

*1:実際は卑猥でも何でもない

*2:なーんて、自分の面白いと思った事と得られている評価を勝手に結びつけて、「適切」とか言っちゃうのは若干イタい発言かもしれないなと思いつつ