珈琲一杯の薬理学:岡希太郎

 その昔、自分が中学生の頃だっただろうか、学年主任の先生が「眠いからってコーヒーなんか飲んだら体に毒だから止めた方が良い」と言っていたのを覚えている。その時はなんとも思わず、コーヒーを飲む習慣もその頃は無かったので、「あれは大人になってから飲むもんなのかなー、酒やたばこみたいな?」程度だった。

 今でこそコーヒーが健康に良いらしいという事が実験によって明らかになりつつあるけれど、ちょっと前はそんな認識だったような気がする。なんだったのだろう、あの風潮。今ではすっかりコーヒーを常飲するようになって、インスタントじゃ嫌だなとか、アレは嫌だコレは微妙だとか贅沢言う面倒な子になってしまった自分。コーヒーは体に良いですという記事を読む度にちょっと得した気分になる。今回はそんなコーヒーを、薬理学という視点から読み解く、毎日のコーヒーが少し楽しくなる本。

珈琲一杯の薬理学

珈琲一杯の薬理学

 全体を薬史学、薬理学と二つの章に分けて、前半で主にコーヒーの歴史を解説し、後半で専門的知識も交えながら、実際にどういった症状にコーヒーの成分が効果的であるかを説明する。

 前半の薬史学では、コーヒーが辿った道がいくつかの点アルコールと大変よく似ている事に気付く。普及に宗教的な部分が深く関わっていることや、途中禁止の期間が合ったこと、そして薬理的効果など、まだまだ類似点は多そうだ。

 ちなみに雑学的に面白かったのは、インスタントコーヒーの発明者が日本人の加藤博士だったというエピソード。結果的にG・ワシントンという人物が特許を取ってしまったらしいが。
Wikipedia - インスタントコーヒー

 その代わり?なのかは分からないが、日本では缶コーヒーというアジア圏独自文化も産まれた。
Wikipedia - 缶コーヒー:世界の普及状況
これは日本の自動販売機の信頼性っていうのも大きな普及要因と言えそう。それから缶コーヒーの新作数も異常。

 後半の薬理学パートでは、コーヒーが効果的とされる病気がいくつか紹介されている。肝臓がん、2型糖尿病パーキンソン病などの予防などが、その一部である。ただあくまで予防策であるので注意されたい。もうひとつ残念なのは、その予防効果がメカニズムとして明確に示されている訳ではなく、比較実験としての傾向に過ぎないというところが、すっきり飲み込めない所である。医学ってそういうものなのかもしれないけど。

 病気の予防効果狙ってコーヒー飲み始める人は殆どいないと思うけど、ともかくコーヒー好きなら一度目を通してみたい内容になっているのでは。

珈琲一杯の薬理学

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