大劇場での演出はもっとこう…

 先日赤坂ACTシアターで「かもめ」を観劇。「かもめ」といえばかの有名な劇作家アントン・チェーホフの戯曲である。また、トレープレフ役に藤原竜也、トリゴーリン役に鹿賀丈史と、見栄えのする役者さんばかり。かなり期待が持てる…!と思ったけど結果的にはやや残念な芝居でした。

 まず劇場の扱い方が良くない。今年開館したばかりの赤坂ACTシアターは、収容人数1324人と、規模としてはかなり大きな劇場。大きなハコは演出が難しい。同じエネルギーを持った芝居ならば、小劇場の方がその魅力の密度を濃くすることが容易だ。何故ならそれは劇場の体積や、役者と観客との距離という物理的な問題が非常に大きく影響するからだ。小劇場の芝居は、そう言う意味で雰囲気が良く伝わり、簡単な芝居でも満足感は大きい。だが大劇場の芝居はそうは行かない。小劇場と同じエネルギーを持つ芝居で望めば、当然密度が下がって、観客の集中力は散漫になる。

 それを踏まえて「かもめ」という作品はどうだろうか。全体を通してアクションの少ない、地味目な芝居で、基本的には台詞劇。役者にかかる負担は大きい。その点今回の役者さんは実力者揃いで、特に第2幕の緊張感なんかはグッと迫るモノがあって面白かった。だが第1幕は…退屈な演出だったと言わざるを得ない。照明も音響もメリハリが無い上に、脚本もどこか進行が散漫で、分かりづらい。眠い。実際2度も寝た。本当に酷い、俺。それから大衆受けを狙っているのか、ちょいちょい下らない笑いを取る芝居をするのが蛇足。せっかく侃々諤々して作った重くて良い雰囲気を、無粋な笑いでブチ壊す。これは客が笑うからいけないんだけど…そこ笑う所じゃありませんよ…みたいなところでヘラヘラ笑い出す奥様方。集中出来ません。そういえば、会場の時から薄々感づいてはいたのだけれど、あの人たち、藤原竜也を見に来てるのね。観劇しに来たんじゃなくてイベントに参加しに来た訳か。

 うーむ…演出は栗山民也か…。あー、この人が書いた本持ってたなそう言えば…(まだ読んでないけど)。あの芝居を小劇場でもう一度観られたらなぁ、全然印象が違うんだろうなぁ。