鑑定士と顔のない依頼人

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 ニュー・シネマ・パラダイスジュゼッペ・トルナトーレ監督と、劇伴はエンニオ・モリコーネという組み合わせ、という名前で引きが抜群の映画を見てくる。余談だが、ネイバーまとめのとある記事で大変上手に煽られてて、見に行く気にさせられた。しかしそういういいコトばっかり書く記事をみると「ステマか?」と考えちゃうようになっているのが捻くれてるなぁと思ったりして反省している。

 さて以降はネタバレを含みつつ。冒頭、超人気の鑑定士の元へ、女性から鑑定依頼の電話。だがその彼女に会いに行くも、なかなか会えない。ははぁ、なるほど。以降は依頼人は姿を現さないんだな、そこがキーになって謎が展開していくにちがいない…と思ったら壁の向こうにいるという話になった。でもまだ姿を現していないし、本当にそこにいるかまだ分かんないよね!どこからか操作してるのかもしれないし、壁の向こうなんて無かった!ってオチになるのかも!…と思ったら向こう側に目が見えて、どうやら壁の向こうに誰かはいるらしい。誰がいるか…いやまさかそのまま依頼人がいるはずは…あ、もしかして管理人が監視しているのか!?…なんて思ってたら、普通に女の人が現れてちょっと拍子抜け。いやいやいや、でも現れた女性が依頼人だとは限らない、そんなまさか、と思ってたら依頼人だった。オマケに鑑定士がその依頼人が好きになって、どんどん二人の関係が近くなり、壁の向こうにも招かれて信頼関係が出来て、最終的にセックス!若い女性と高齢男性のセックス!うーん、男性は上手に年齢を重ねると、いつまでも女性から需要あるよね。うらやましい。けしからん。鑑定士は自分のコレクションを秘密部屋に隠して、ときどきそこでそれらを眺めては幸せ時間を過ごしていたのだけど、この部屋に女を招いた。いくらなんでもタイミングが早い、それはマズイ、と思ったら案の定、コレクションを盗まれて、茫然自失、恋人だと思ってた女にも逃げられて、喪失と裏切りの失意で鑑定士は生きる気力を失ってボケちゃうのでした。

 って、結末まであらすじ書き出していっちゃったけど、なんかあまりにも捻りが無くて拍子抜けだなぁ…。極上のミステリー、って煽るわりにはミステリー感は冒頭くらいしか感じないし、依頼人の女が姿見せてからミステリー要素ほとんど無い。個人的には女出てきておじいちゃんが恋愛にのめり込んだ所から退屈モード。そもそも日本語タイトルの「鑑定士と顔のない依頼人」ってのが良くない。「顔のない」っていう割に、顔出てきちゃってるじゃねえか。あと思わせぶりな伏線というかアイテムはなんなのか。オートマタのカラクリとか、カフェにいる小人の人とか。いや、なんとなく回収しているように物語に絡んでたけど、その程度の絡め方でいいの?まだ何か謎めいた秘密を持ってるんでしょ?もしかしてEDロールの後にさらなる展開が…もちろん無かった。屋敷の横のブルーシートかかってる建設中の何かも気になる。クラシックな屋敷との対比がスゴイ際立ってて、なにかあるのかと思った。足の悪い管理人は何者だったのか。単なる食料運び係だったのか?夜に鑑定士を襲った3人組は依頼人と関係があるのか無いのか。あの夜に小人の人が電話してたのは、救急車だったのか?そもそもあまりにも二人の関係が順番に進展しちゃうもんだから、怪しさを感じずにはいられないよ!完全にオチがみえみえの伏線だよ!!

 ニュー・シネマ・パラダイスエンニオ・モリコーネっていう名前で膨れ上がった期待感は、色々裏切られてしまった。ボケたりはしないが。ちなみにコレクションを奪われてしまう展開は、奥さんに趣味の鉄道模型を捨てられるコピペを思い出さずにはいられない。

 2回目見に行くと安いみたいだけど、謎解きのないミステリー映画を2回観る必要は…。

 と、ここまで愚痴愚痴になってしまったが、映画としては重厚感のある雰囲気、繊細な美術、それらをタップリと堪能する間のとり方など、見ていて気持ちの良い絵作りであったのは間違いない。音楽もモリコーネ節が効いていて素晴らしい。モリコーネの音楽好きなんだよ。セルジオ・レオーネとの組み合わせはもっと好き。役者さんの演技も素晴らしい。鑑定士役のジェフリー・ラッシュの多彩な表情。

 まとめると、ミステリー映画じゃなくて、恋愛映画って事で見に行ったほうがいいかもしれない。後味は悪いけどね。